プロローグ 王子様のプロポーズ1

プロローグはもう見られませんので、懐かしんで頂ければと完全レポします(。^-^。)

 

 

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◆ Prologue 夢を叶えるために ◆

 

 

終業時刻直前に上司から残業を頼まれ、無理かと思われた面接時間にギリギリ間に合った。

 

面接官 「美大のデザイン科をご卒業されていますが……」

     「アパレルでの実務経験は?」

 

私 「学生時代、セレクトショップで販売のアルバイト経験はあります」

 

面接官 「デザインのほうは?」

 

私 「……ありません」

 

デザイン関係の就職がなかなか決まらず、今は一般企業のOLをしている私。

でもデザイナーになる夢を捨てきれなくて、デザイン事務所に履歴書を送りまくった。

 

面接官 「結果は一週間以内にご連絡いたします」

 

(また、ダメっぽいな……)

 

 

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くたくたになって帰宅すると、先日面接を受けた会社から通知が来ていた。

封を開けながら自室へ向かうと、ドアを閉めたところで 『残念ながら』 の文字が目に入る。

 

私 「やっぱりな……」

 

不採用通知をゴミ箱に入れると、ベッドに寝転がりふて寝をきめこんだ。

 

(なかなかうまくいかないな…)

 

 

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仕事のあと、大学時代の友達と来たのは街中のカフェ。

 

同僚 「残業ない日はいつもここ?」

 

私 「うん。お店の感じが異国風っていうか、解放感あるでしょ」

 

同僚 「あー、わかる。現実逃避ね。で、どうなのよ?再就活のほうは」

 

私 「ぜんぜんダメ。面白いほど落ち続けてる」

   「残すはベンチャーっぽいデザイン事務所と……夢のまた夢」

 

同僚 「夢のまた夢?」

 

私 「受かるはずのないとこ。いちかばちか履歴書送ってみたの」

 

同僚 「どこ?」

 

私 「……た、たぶん、知らないと思う」

 

同僚 「そっか。あ、ごめん、彼氏だわ」

 

同僚が彼氏からの電話で席を立った。

私は大好きな雑誌 『DRESS』 を鞄から取り出す。

表紙を飾るファッションは、憧れの一流ブランド 『ジョン・ピエール』 のもの。

そのデザインにうっとりと見とれながらも、苦笑いがこみ上げる。

 

(こんなすごいブランド……受かるわけないよね)

 

応募したデザイン事務所の残る一つは、この、ジョン・ピエール。

同僚だって必ず知ってるはずのブランドだけど、さすがに恥ずかしくて言えなかった。

と、携帯が鳴り、画面に目を見張る。

 

(ベンチャーの事務所だ! 電話ってことはもしかして!?)

 

私 「先日は面接のお時間をいただきありがとうございました!」

 

採用担当 「こちらこそ。で、結果なんですが……今回は残念ながら……」

 

(……終わった)

 

電話を切って溜息をつくと、ふと向かいの花屋が目に入る。

慈しむように花を手入れし、いきいきと働く店員。

 

(本当に好きな仕事をしている人の顔だ……キラキラしてる)

 

なんとなくその店員を見ていると、インスピレーションが湧いた。

デザインノートを取り出し、浮かんだ発想を形にしていく。

不採用のショックを紛らわすかのように、私は夢中でペンを走らせた。

 

(……好きなことを仕事にするって、奇跡なのかな)

 

でも、現実と折り合いをつけて夢を諦めることが、本当にいいことだとはどうしても思えない。

 

同僚 「ごめーん、遅くなった。ねー、あれ見て!超かっこ良くない?」

 

 

同僚は戻ってくるなり、カフェ店内のスクリーンに映し出された、どこかの国の

王子様に興奮しきり。

 

同僚 「王子様なんて言うと絵本の中のキャラみたいな感じがするけど」

   「現実にいるんだもんね……本物の王子様が」

 

私 「だね……」

 

スクリーンを見ながらも、どうしても不合格のショックが隠せない。

 

同僚 「憧れちゃうよね、王子様」

 

私 「うん………」

 

同僚 「でもさすがに出会えないか、OLの私たちに……」

    「いや、でもまだ間に合うか? って、あれ……どうかした?」

 

あまりに興味のない私を見て、同僚が言う。

 

私 「あ、ごめん! ……実は……さっきまた不合格の電話があって」

 

同僚 「そうだったんだ……残念だったね。ごめん、王子様の話なんか浮かれて話して」

 

私 「ううん!私こそごめん。でもまだ終わったわけじゃないし」

 

同僚 「そうだよ。でもさ、見つかるといいね。あんたにぴったりの仕事も……」

    「王子様も」

 

私 「……ん?」

 

同僚 「お・う・じ・さ・ま!」

    「最近はデザイン会社のことで頭いっぱいみたいだからさ」

 

私 「そうだね……」

 

確かに最近の私といえば、デザイン会社就職のことで頭がいっぱいで、恋はお預け状態が

続いていた。

 

同僚 「ま、応援してるから! 受かるといいね、その……夢のまた夢のとこ?」

 

私 「うん、ありがと!」

 

 

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私 「ただいま」

 

二階へ上がろうとするとリビングのドアが開いた。

 

母 「ご飯は?」

 

私 「今日はいいや」

 

母 「あら珍しい。体調でも悪いの?」

 

私 「なんとなくね、おなか空いてなくて」

 

階段を少し上がったところで、母が封筒を持ってきた。

 

母 「これこれ、何か届いてるわよ。なんだか外国みたいな切手ね?」

 

見慣れない切手に興味津々の母。

階段を下り、手渡された封筒を見てみると、ジョン・ピエール事務所からだった。

一瞬、そのロゴに心が躍る。

 

(って、なに期待してんだろ。こんな一流のとこ、受かるわけ……)

 

封筒を母に差し出す。

 

私 「開けてみて。もう中身はわかってるから」

 

そう言いながらも、封筒を渡す手がかすかに震える。

 

母 「え? いいの? あら~、ほんと珍しい切手」

 

母は封を開け、手紙を読み始めた。

 

母 「今回はご応募ありがとうございます」

 

私 「そこ飛ばしちゃっていいよ」

 

母 「あ、そうね。ええと……」

   「この度の採用に関しまして……貴殿におかれましては……」

 

母が目を見開いた。

 

母 「合格とさせて頂きます!?」

 

私 「ん?」

 

母 「だから、合格とさせて頂きますだって」

 

私 「え?……ぇぇえええ!?」

 

(私が……ジョン・ピエールに……合格!?)

 

私 「やったー! お母さん、私、合格だって!」

 

抱きつかれながら、母は冷静にきいてくる。

 

母 「で、どこにあるの?この事務所」

 

私 「……シャルル王国」

 

今度は母が大声をあげた。

 

 

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ジョン・ピエール事務所に送った拙いデザイン画が、奇跡的に私を夢へと導いた。

遠く離れたシャルル王国へ行くことに気をもんでいた父も、最後は笑顔で了承してくれた。

諦めなかった夢への想いを新たにする私。

 

(絶対、一人前のデザイナーになってみせる!)

 

この旅立ちが、やがて自分の運命を大きく変えることになるとは、

この時の私は想像すらしていなかった――。

 

 

To Be Continued ...

 

 

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